コロナウイルスが流行し始めて3年目となりました。コロナウイルスは世界的に広がり、マスクの着用が義務付けられたり、行動の制限などが強いられるようになりました。コロナウイルスの流行が持続していく中で、日本の中でも、日々対応策が変化しつつあります。
特に、マスクに関しては夏本番の今、政府からは熱中症予防のために屋外ではマスクを外すようにと声掛けがありました。暑いしマスクを外したいけど、感染も怖いし、皆もマスクを着けているし・・。とマスクの着脱に葛藤を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。私自身も真夏の暑い日でも、感染したくない・感染するのが怖いな、一人だけマスク外したら浮いちゃわないかな・・・という思いからマスクを外せずにいました。
ニュースのインタビューなどを見ていると、「人がいないところではマスクを外して、人がいるところでは着けています」と答える方や、「感染も気になるし、まだ皆つけているから、着けた方がいいのかなと思って」「つけていないと、なんだか嫌な感じに思われるので着けています」と答える方が目立ちました。感染予防のためと答える方もいらっしゃる中で、周りの人の目が気になったり、みんなが着けているから、という理由でマスクを着用しているという意見があったのが印象的でした。これを心理学では“同調”といいます。
同調とは、“自分の意見と異なる他者の行動や意見、あるいは自分に対する期待などによって、自分の意見や行動をその他者に合わせて変えること。”と言われております。簡単に言うと、「最初の一杯はとりあえずビールで」といったように、皆で同じ意見になったり、他のあるものに調子を合わせている状態のことを指します。
同志社大学が、マスク着用の理由に関して調査を行ったところ、人々のマスク着用は、他の着用者への同調傾向と強く結びついていることが判明しました。この研究からもわかるように、マスクの着脱においても、“みんなが着けているからつけなければ”、“みんなもつけていないから、着けなくていいか”。といった思考となり、マスクの着脱を判断している傾向があると考えられます。コロナ禍では非常に大きく同調行動が起きていると考えられます。
このように同調が起こる要因は一体どこにあるのかというと、大きく規範的影響と情報的影響の2つが挙げられます。
★規範的影響
自分の属する集団が目標達成のために協調性を必要とする時などに、集団の期待に沿おうとして、同調行動をとりやすくなることを指します。(例:周りの皆が残業しているから残業しよう)
★情報的影響
自分の判断に確信が持てなかったり、”周りの人はどうしているか”を正しいものとして受け入れてしまい、同調行動をとることを指します。(例:あのラーメン屋さんは皆が大行列を作っているから、おいしいに違いない)
ここでいうマスクも、「自分としてはマスク外してもいいと思うけど、周りの皆はどうしているんだろうか・・・・」といった情報的影響を強く受けていると考えられます。
ではなぜ人は同調をするのでしょうか。一番大きな部分には「安心感」や「親近感」があるのではと考えられます。人と違うことをして嫌われたくないという心理が働き、“みんなと同じだから安心”、“みんなも一緒だから大丈夫”という気持ちが生まれ、同調が働くのではないかと考えられます。
今回のマスクにおいても、「皆が着けている」「皆が外している」といったように、周囲と同じであることで、安心感が働いているのかもしれません。
ただ、同調は安心感などが得られる反面、自分自身の意見などが思うように意思表示しにくくなる側面もあります。このあたりについてのバランスは難しい所でもあると感じます。
もしこのような同調的場面に遭遇した時には、相手の意見もしっかりと聞き、尊重した上で、自分自身はこう思っていると伝えてみることで、自分自身の意見も伝えることができる上に、建設的に話し合うこともできたりします。是非お試しください。
今回のコラムではマスクを着ける理由に同調が働いていることを取り上げてみました。同調以外でもマスクを着ける目的は、感染予防のためや、ファッションの一部、日焼け防止、素顔を隠すため等様々な理由があるかと思います。日々目的や方針など変化しているこの世の中ですが、コロナウイルスが一日も早く終息に向かうことを願っております。
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