「ついカッとなって…」
「思い出す度にイライラする~」
「あいつだけは絶対に許さない!」
大なり小なり誰もがこういった怒りを体験したことがあると思いますが、ほとんどの方が怒りという感情に対して“厄介で手に余るもの“というネガティブイメージを抱いているでしょう。それもそのはずで、怒りはとても強烈なエネルギーを持ち、私たちを感情的・衝動的に突き動かします。結果として他者を攻撃したり、冷静な判断ができなくなって向こう見ずな行動を取ったり、話し合いたかったこととは無関係なところで喧嘩になったりと、人間関係を悪化させる要因となります。さらにはその言動を後々思い返して後悔し、落ち込んだり自分を責めたり、あるいはそもそも怒りを抑えこもうと必死になって疲れてしまったりすることもあります。

一方で、怒りを感じるからこそ生き物は外敵から身を守ることができます。例えば、人間が触ろうとするとシャーッと威嚇する猫、飼い主にお風呂に連れていかれそうになって歯をむき出しに唸る犬。これらは怒りを露わにすることで、自らの命が脅かされるかもしれない状況を避けようとしています。では、私たち人間の場合はどうでしょうか。怒りが知らせてくれるのは命が危険な状況だけではありません。例えば、以下の場面で出てくる怒りにはどのような意味があるでしょうか。
上司の指示が二転三転する
①「何日もかけてようやくできた資料なのに!」
⇒資料作りにかけた時間や労力が無駄になったことへの怒り
②「私のことを何だと思っているんだ!」
⇒無下に扱われていること、存在を軽んじられていることへの怒り
夫がいつも靴下をその辺に脱ぎっぱなしにする
①「なんてだらしがない人なんだ!」
⇒理想の夫像からかけ離れていくことへの怒り
②「せっかく片付けしたばかりなのに!」
⇒整理整頓された安らぎの空間が壊されたことへの怒り
このように、怒りは自分自身が大切にしているものが脅かされていることを知らせてくれます。大切なものとは命や物に限らず、自分の時間や理想、価値観、社会的評価、人間関係などさまざまなものを含みます。怒りが「あなたにとって良くないことが起こっているよ!」と知らせてくれることで、現状に抵抗するためのエネルギーが生まれ、行動に繋がっていくのです。怒りを感じることができなければ、自分が大切にしているものを知らぬ間に失ったり奪われたりするでしょう。

では、どうしたら怒りに振り回されずうまく付き合っていけるのでしょうか。ここで重要になるのは、怒りの奥にある本当の感情に目を向けることです。実は、怒りは氷山の一角にすぎません。
水面下には怒りに覆い隠された本当の感情が存在します。例えばさみしさ、失望感、悲しみといったやり場のない感情。あるいは自責感や自己嫌悪、羞恥心といった自分に向けられた感情かもしれません。つい表面を怒りで覆って目を背けてしまうのは、これらの感情が真正面から受け止めるには苦痛が大きくストレスフルだからです。いっそ怒りに変えてしまえば、「悪いのは自分じゃなくて周りの人や環境」と思うことができ、気持ちが楽になります。しかし先述したように、怒りに流されてしまうと自分も周りも傷付く結果になりかねません。そこで、怒りから目を背けずに向き合うことが肝心なのです。自分がどんな場面で怒りを感じるのか、何に対して怒っているのか、傷付けられた大切なものは何か、大切なものを傷付けられたことでどんな感情が出てくるのか…。
怒りはただのサインです。その奥にある本当の感情に意識を向けられるようになると、怒りに振り回されず素直に気持ちを伝えられるようになるでしょう。
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